親権は永久に守られた親のための権利だと勘違いしてはいませんか?
それは実は間違いで、子どもの利益にならないと判断されれば、剥奪される可能性もあるのです。
では、どんな場合に親権喪失になりうるのでしょうか?
1.親権は剥奪されることもある
親権とは親が子を監護・養育し、財産の管理を行う権利や義務のことを言います。
基本的には、夫婦間に子どもが生まれると、両親が自動的に親権者になる仕組みになっています。
しかし、どんな場合でも親権者でいられるわけではありません。
民法834条では、親権を喪失させるケースについて、以下のように制定しています。
- 父または母による虐待や悪意の遺棄がある時
- 父または母による親権の行使が著しく困難または不適当であることにより、子の利益を著しく害する時
つまり、児童虐待などにより子どもの心身の安全が著しく害されている場合は、親権喪失を検討しなくてはならない、ということですね。
2.親権喪失を申し立てるには
では、児童虐待などにより子どもの利益が脅かされている場合、どのように親権喪失の手続きをしたら良いのでしょうか?
同じく民法834条で、「家庭裁判所は、子・その親族・未成年後見人・未成年後見監督人・検察官の請求により、その父または母について、親権喪失の審判をすることができる」と定められています。
しかしここで問題になるのが、親権喪失は親権を無期限に剥奪する制度である、ということです。親権喪失の効果の重さは絶大です。
その分、家庭の問題を解決し親子関係を取り戻すことができなくなると考えられるため、親権喪失の申立てはあまり行われず、認められるケースも少ない現状がありました。
そこで、現場の実態に合うよう、平成24年に民法改正がなされました。
親権を最長2年間の制限の中一時的に停止する「親権停止制度」が新しく設けられ、親権喪失についても、「2年以内にその原因が消滅する見込みがあるときは、この限りでない」と定められています。
3.親権は子の利益のために
近年、児童相談所に寄せられる児童虐待の相談は増え続けています。
これは、児童虐待防止法が浸透し、国民に「通告の義務」が行き渡ってきたため、今まで見えていなかった虐待が表面化してきたのかもしれません。
児童虐待防止法では、「児童虐待を受けたと思われる児童」を見つけた場合、通告をしなければならないと定められているのです。
たとえ結果として間違いであったとしても、そのことにより責任を問われることはないとされています。
親は、子どもに監護及び教育の範囲内でしつけを行うことができます。
しかし、親だから、しつけだから、何をしても良いというわけでありません。親権は、親がふりかざしていい万能の権利ではないのです。
子どものためにならないと判断されたら、剥奪される可能性もあるのが親権なのです。