親権は親の権利でもありますが、義務でもあります。一方的に放棄することは基本的にできません。
しかし、やむをえない事情であると認められた場合のみ、親権の一部またはすべてを適切な人物に譲ることが可能です。
どのような場合に認められるのか?そして、どんな方法があるのでしょうか?
1.親権は放棄できるのか?
親権とは、未成年の子どもの身の回りの世話をする「監護権」と、財産の管理をする「財産管理権」の二つで成り立っています。
親の権利でもありますが、義務でもあるため、育てるのが大変といった理由での放棄は認められません。
しかし、親権者が病気にかかり長期入院が必要となった・海外への転勤が決まった・刑に服することになった等、やむをえない事情がある場合はその限りではありません。
ただし、このような事情で親権を手放したいと考えた場合にも、一方的に放棄はできません。
親権の一部またはすべてを適切な人物に渡す、という手続きを踏むことになります。
必ず子どもの新しい親権者を見つける必要があるのです。
2.親権を誰に譲るか
親権を適切な人物に譲る方法としては、以下が考えられます。
- 監護者のみ変更する。
- 親権者変更の調停を行う。
- 親権辞任の申立てを行う。
例えば、一時的な入院や海外出張の間だけでしたら、監護者のみを変更することができます。
もう片方の親や祖父母に監護権のみ移し、子どもと一緒に住み身の回りの世話をしてもらうのです。
子どもの世話ができないのが一時的なものである場合、この方法を検討しても良いかもしれません。
しかし、それが長期に渡る場合は、親権者の変更を視野に入れる必要があるでしょう。
親権者の変更は、家庭裁判所に調停を申立てることで行うことができます。
最後に親権辞任についてですが、これは、もう片方の親が親権をもつにふさわしくない場合に検討する必要があります。
元妻が育児放棄をしていたため、離婚をして夫が親権を行使しているようなケースでは、親権者を元妻に変更するわけにはいきません。
そこで、家庭裁判所に親権辞任を申立て認められると、家庭裁判所が親権者の代わりとなる「未成年後見人」を選定してくれるのです。
3.親権の回復
民法837条では、以下のように定められています。
- 親権を行う父又は母は、やむを得ない事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、親権又は管理権を辞することができる。
- 前項の事由が消滅したときは、父又は母は、家庭裁判所の許可を得て、親権又は管理権を回復することができる。
つまり、一度辞任をして手放した親権は、やむをえない事情が消失した場合に、回復を申立てることもできるというわけです。
しかし、子どもからしたら、親が離婚し、更には親権者が次々変わることは心身の成長に大きな影響を及ぼすことが考えられます。
やむをえない事情が発生した場合にも、子どもにとって一番良い方法を検討することが必要と言えるでしょう。