離婚届には、未成年の子どもの親権者を記載する欄があるのをご存知ですか?
日本では、婚姻中は父母が共同で親権を行使すると定められていますが、離婚後は必ずどちらが親権者になるかを定めなければなりません。
共同親権から、単独親権となるのです。しかし、欧米では離婚後も共同親権を行うのが一般的です。
離婚後共同親権とは何でしょう?どうして日本では認められていないのでしょうか?
離婚後は必ず単独親権になる
離婚の際、親権者欄が空欄の離婚届は受理されませんので、今後の子どもの親権者を決めなければ、離婚ができないというのが現状です。(民法818条・819条)
このような離婚後単独親権制度によって、子どもの親権を巡り夫婦間で争いが起こることが度々問題となっています。また、子どもの心身の発達に何らかの悪影響があるとも指摘されています。
そのため、この問題を解決する糸口になるのではと注目されているのが、離婚後も父母が協力して子どもの養育に関わる「離婚後共同親権」制度です。
この制度は、欧米ではすでに一般的になっています。
共同親権のメリット・デメリット
では、離婚後共同親権にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
メリット
子どもの精神的・経済的な安定
子どもにとっては、離婚後も両親が積極的に関わってくれることで、愛されているという実感を得ることができます。
そして、単独親権の場合2割とも言われている養育費の支払いがスムーズに行われ、経済的にも安定することが予想されます。
育児負担の減少・虐待の防止
単独親権では、経済的にも精神的にも片親に負担がかかりがちです。
しかし、共同親権を行うことで育児負担が減少し、余裕を持って子どもに向き合えると考えられています。
更には、離婚後も常に両親の目があることで、例えば単独親権で母子密室育児になってしまうより、虐待の抑止力になると期待されています。
デメリット
両親の意見の対立
離婚後共同親権は、その名の通り、離婚後も両親が共同で親権を行使します。
そのため、子どもの進路や手術の同意などの重要事項決定時に、片親の独断では決められません。
養育計画を立て、離婚前によく話し合うことが対策となるでしょう。
引越しの制限
共同親権をスムーズに行うために、元妻・元夫の住居から物理的に遠く離れることを制限する場合があります。
全国転勤がある仕事などは、共同親権の行使が難しいかもしれません。
子どもの気持ち
例えば、一ヶ月ごとに元妻・元夫の家を行き来するように約束したとしても、それが、 子どもにとって負担になることも勿論考えられます。
単独親権とは異なる悩みが生じることを念頭に置き、子どもの気持ちに寄り添うよう注意が必要です。
増える共同親権を求める声
このように、メリットも沢山ある離婚後共同親権ですが、どうして日本ではいまだに認められていないのでしょうか。
それには深い理由があるというよりも、戦前の「家制度」の名残であり、家族のあり方が多様化した今の日本に制度が追いついていない、というのが現状のようです。
しかし、子どもの養育に関して離婚後も協力する意思が強い場合に、親権から監護権を分離し、両親がそれぞれ行使することで、実質的な離婚後共同親権を実現しているケースもゼロではありません。
また、離婚後共同親権を求める署名活動も起こっていますし、様々な活動をしている団体も存在します。離婚後も共同親権を求める声は確実に高まっていると言えるでしょう。
時代はどんどん変わっていきます。今後、離婚後の単独親権について見直される時が来るかもしれませんね。