親権の基礎知識

親権と監護権の分離 ─父母共にどうしても親権が欲しい!

子供
父母共にどうしても親権が譲れない場合、争いが長引くと子どもに悪影響があるかもしれません。

そんな時、親権から監護権のみを分離し、一方が親権、一方が監護権というように分けることが可能です。

ただし、それが子どものためになるかどうかをよく考える必要があります。

1.父母共にどうしても親権が欲しい! 解決策は?

親権は「監護権」と「財産管理権」の二つの権利義務を柱に成り立っていることはご存知ですね。

子どもと一緒に暮らし身の回りの世話や教育を行うのが監護権で、財産管理や代理で契約を行うのが財産管理権になります。

通常は、親権者が両方の権利義務をもって未成年の子どもを監護教育することになっていますが、必要な場合、親権から監護権のみを分離することが可能です。

例えば、離婚協議中の夫婦が共に親権を譲れない場合、夫が親権・妻が監護権というように、親権と監護件を分離させることで妥協点とするケースがあるようです。

2.監護権の分離が認められる場合

しかし、監護権の分離は可能ではあるものの、子どもの福祉の観点からは推奨されているわけではありません。

父母による親権の話し合いがうまくいかず、早く解決した方が子どもの精神上良いであろう場合など、親権争いの妥協点という意味合いが強いようです。

他には、監護権を分離する理由として以下が挙げられます。

  • 一方が子どもの監護には適任だが親権全体の行使にはふさわしくない場合。
  • 一方が財産管理には適任だが子どもの監護者としてはふさわしくない場合。

例えば、財産管理には父の方が向いているが、子どもと一緒に暮らし世話をするには母のほうが向いているようなケースがあるかもしれませんね。

このように親権から監護権のみ分離させる方法は、子どもに混乱を起こさせ、子の利益にならないという意見があるようです。

しかし、元夫婦が親権と監護権をそれぞれ持つことによって、ある種の共同親権のような関わりが生まれるのではないかという肯定的な意見も存在します。

3.親権と監護権の分離手続き

では、親権から監護権を分離するには、どのような手続きを踏めば良いでしょうか?

協議離婚であれば、夫婦間の話し合いのみで決定することができます。

ただし、離婚届には親権者を記入する欄がありますが、監護者を記入する欄はありません。

後のトラブルを防ぐためにも、話し合いで決定した事柄は公的な書面に残しておく方が良いでしょう。

話し合いがうまくいかない場合は、家庭裁判所に「子の監護者の指定調停」を申立てることになります。家庭裁判所では、子どもの意向を尊重しながら、夫婦間の話し合いがまとまるように手助けしてくれます。

それでも話し合いがまとまらない場合は、調停不成立となり、裁判官が審判を行うことになるのです。

しかし、このように監護権の分離ができるとはいっても、不都合が出てくる場面も勿論あります。

子どもを監護する親が子どもの氏を自分と同じに変更したいと思っても、親権者の許可が必要であったり、親権者と監護者が異なることで現実的な困難に直面することがあるかもしれません。

それでも監護権の分離が必要かどうか、慎重に考える必要があるでしょう。

-親権の基礎知識